Eye WearMarch.16th.2008 |
alain mikli
視力が落ち出したのに気づいたのは中学2年の夏だった。その頃は、眼鏡は格好悪いものと決まっていた。実際、かけたくなるような眼鏡を見かけることはないし、見つけようとも思わなかった。視力回復センターへ行き「遠くの山や緑を、できるだけ見るように」とアドバイスされ眺めるうちに、緑色系は私の好む色のひとつとなった。コンタクトレンズにもチャレンジしたが眼の中がゴロゴロとする異物感が耐えられない。とにかく選択肢が少ない時代だったが、初めて満足する眼鏡を手に入れたのは、東京上野にある白山眼鏡店で数種類のセルロイド版を見ながらオリジナルものを創ったときだった。その後、福岡では白山眼鏡にいた仲西さんのお世話になっている。
仲西眼鏡店でもハンドメイドのオリジナルを創ったり、ジャン・ラフォンやオリバー・ピープルスなど作家ものをいろいろと紹介していただいたが、いちばん気に入ったのはアラン・ミクリの眼鏡だった。
これは10数年前、初めて購入したミクリのアイウェア。彼自身がデザインしたオリジナル・アセテートの眼鏡生地は、厚く丈夫でかけ心地が良い。それでいながら、まるでオブジェのような比類無き美しさを呈している。
1度手にしてからは、すべてアラン・ミクリのアイウェアを使用している。彼の溢れるアイデアは留まることを知らず、建築家でありながら様々な分野でデザインを手がけるフィリップ・スタルクとのコラボレーションモデルが登場したり、更なる磨きがかかると同時に柔らかなかけ心地も倍加した。
手前にあるのは、現在愛用しているチタニウムモデル。
もはや、現在では眼鏡をかけることがハンディキャップと思う人も少ないだろう。卓越したデザインで個性を発揮できるアクセサリーとも言えるからだ。とはいえ、かけなくて済めば、それがいちばん良い。
比類なきデザインというのにとても弱い。加えて気に入ったものが無ければとりあえず代用で、というのは私には通用しない。そういう理由で探して選ぶというスタンスが身に付いてしまった。言ってしまえば、センスは別としても、写真を撮る技術というのはすべて選択セレクトがなせる技である。