ValextraApril.6th.2008 |
Valextra Wallet
恥を忍んで書けば、私は2度ほど財布をスリ盗られたことがある。大学卒業後、仕事を始めるため上京してまもなく、ジーンズの尻ポケットに入れていて山の手線車内でやられた。恥ずべきことは2回目の失態も同じ路線の車内においてスラれたということである。しかもまだ駆け出しで親からの援助をお願いしていた時期。金銭的に余裕があったわけではない。不運、不幸というのは立て続けにやってくるものだとその時、確信した。2回とも財布自体はサーファー御用達ベルクロで止めるタイプの水にも浮くというけっして高価ではない財布だったが、数枚の万札と自動車免許証などを挟み込んでいた。そういうわけで2年ほどの東京時代に2度も鮫洲にある自動車試験場へライセンスの再発行のため憂鬱な気分と一緒にでかけた。
Wallet & Card Case
それ以来、長い間、財布というものを持たなかった。「Valextra」バレクストラの財布に出会うまでは。
2005年11月、銀座に直営店「Valextra」が進出した。友人がゼネラル・マネージャーを引き受けオープニングパーティに招待してくれたので、でかけてみた。LVマークやシャネルなどブランドマークが表に出ているものにはまったく興味は無いが、美しく上質で、MOMAに永久展示されている製品もあり、シンプルでいて美しいデザインに、迂闊にもうっとりとしてしまう。
「Valextra」の革製品はイタリアのエルメスと評されていて、素材、ディテールのこだわり、美しいフォルム、ハンドメイドならではの丁寧な造りに、さすがだと唸らせられる。
表面は麦をモチーフにした型押しレザーで、マークなどが入っていないので一見控えめだけど,存在感はしっかりとある。エルメスのような華やかさはないにしても、この存在感は男の物欲を刺激するに十分だ。
バレクストラの製品は、皮のセレクトに始まり、鞣し、裁断、組み立て,ステッチ、コバの塗りに至るまで、現在でもすべてオールハンドメイドで作られている。極限まで贅肉を切り落とし薄くシンプルなフォルムを実現しているので、カード入れや財布に入れ過ぎは禁物。膨らますのは不粋というものだ。現金が無い、否,持ち歩くことが少ない私には申し分の無い逸品であることは間違いない。
バレクストラを知ったのは、以前、ミラノへでかけた友人のお土産でキーホルダーをいただいた時だった。それは小さなグレーの象皮で作られた美しいものだった。きっとこのブランドには、女性より男性の方が魅了されるのではないかと思う。それは質感が良いしデザイン性に優れているのに、ブランドイメージを印象づけるマーク等が付けられていないからである。残念なのはカメラバッグはラインナップされてはいないということだ。