異例の自由人
造形作家・田中治人
20数年前の話だが、田中氏とは「傾きものの仕事場」という連載を持っているとき撮影で初めてお会いした。当時は眼光鋭く、近寄りがたい雰囲気でプライベード的話などで盛り上がることなど想像できなかった。その時代は、エッチングの技法を応用したオリジナリティあふれる作品を創られていた。
2002年3月、あるきっかけで岩田屋コミュニティカレッジというところでフォトレッスンという講座を受け持つことになったのだが、そこの局長に誘われ田中氏宅でのパーティに招かれた。20年ぶりに再会しワインを飲みながら田中氏の作品、私が持参した写真についてと、いろいろな話で盛り上がった。以来よく大名にあるアトリエにおじゃましていた。
あるとき田中氏より「私のプロフィールを形にしたい。その写真を是非、武居さんに撮ってほしい。」ということでM&AグラフィックデザイナーのT氏を巻き込み2004年秋に完成させた。
今まで創られた作品はボルドー美術館に収蔵されたりと高い評価を得ている田中氏だが近年、土偶に魅せられ土に手を入れ新しい作品創りにチャレンジされている。
田中治人氏「創るときは、宇宙の女神と交わっている。」といわれる。高齢だが自由な感性とすばらしい創作意欲をお持ちだ。
私も彼のようにいつまでも、しなやかに年を重ねることができれば・・と願ってる。
遺作展「原初の美が現代に蘇る。」は、福岡県立美術館で開催された。大学ではフランス語を学び、ニューヨークにもアトリエをお持ちになり、グローバルに活躍されている。
福岡にあるご自宅では、私の拙い写真を見て、よくワインとともにアドバイスをいただいた。
フランス語でシャンソンを歌われたり、勝手気ままな食通としても知られ「地球美味学」という本も出版されている。既成のものを相容れない自由奔放ぶりには、いつも驚かされた。2004年に彼岸に渡られたが、その半年前にアトリエで告知パーティを開かれ、私はくやしくて、残念で言葉なく、最後にハグしてお別れした。